幼稚園ってどうして楽しい?(2025年4月30日)
2025年度、新しい春の始まりです。昨年度一年間で先生や友達と築き上げた関係をまた新たな出会いと共に環境を変え、緊張感の中、新生活がスタートしました。新入園児達は、初めて見る先生や知らない同年齢の子と出会う入園式でスタートしました。ずっとお家で一時も離れず家族に見守られながら過ごしていた生活から一転、「はじめまして」の人と「はじめてだらけ」の生活を経験します。不安でないはずがありません。振り返ったらいつも家族の視線が自分に注がれているのを感じながら安心してここまできたのですから……。このように、これまでに築いてきた関係や、ずっと家族に守られて安心できていた環境を変えてまで新しい生活をする事には、どんな意味があるのでしょうか?実はそこには大きな意味があるのです。
幼稚園で何を学ぶ?
幼稚園は、小学校に入学する前の幼児のための教育機関と位置付けられています。子供達が最初に教育を受ける事ができる場所です。ただ、小学校以降に受ける教科的な学びではなく、人間性や心情の豊かな発育のために、一生涯を通じて生きて行く上で必要な様々な能力に刺激を与え、成長と共にその能力を磨く場所だと思っています。
・自分の思ったままに表現する
例えば、入園までは、家庭の中で自分を中心に一日の生活が流れ、思い通りにならない事や我慢する事はそんなに多くなかったでしょうが、入園して一週間内で、ひとつのおもちゃを取り合って泣いたり機嫌を損ねたりする様子や、思い通りにならなかったら、「いや!」「だめ!」「あっちに行って!」「嫌い!」といきなりストレートに言って相手の反応も無視するといった様子があちらこちらで見られます。これは、当たり前の事です。こうした場面に出会う機会がそんなにあったわけではなかったのですから…。むしろ、自分の今の気持ちを言葉や態度で表現できる事は必要な事です。人との関わりがあればこそできる一つの学びなのです。
・相手の気持ちを知る
そして、少し大きくなると、相手の気持ちに気付きどうしたらいいのかを考えるようになります。人の話に耳を傾けたり、間に入ってくれる先生の指導を本気で聞こうとする気持ちになります。良い関係を築くためにいろいろと思いを巡らせます。徐々に、「貸してあげようか」「一緒に使おう」「ちょっと待ってね」と言いながら遊べるようになり、その時の楽しさを味わいます。自分と相手の思いを伝え合いながら、良い方法を探っていく…そのためには、喧嘩も必要、時には傷つく事も、傷つけてしまう事もあるかもしれません。そこを乗り越えた先には良い関係の深まりがあります。
・人として大切な学びを確立する
もっと大きくなると、これまでに築いた人間関係を更に拡げ、新しい出会いの中で協力したり一つの事に夢中になって解決する姿勢が育ちます。それぞれの友達の個性を知り、分かり合いながら自分も周りの友達と共に成長していこうとします。「どうしてだろう?」「しりたい!」「こうしたらどうなる?」「これではだめか」「じゃあ、これならどうかな?」と心身共に意欲が掻き立てられる生活をする事で、“学びたい気持ち”“達成したい気持ち”の土台が作られていくのです。そのためには、悔しい思いも小さなケガもするでしょう。それらの痛い経験は、心を強くしてくれたり安全に身を守る方法を学ばせてくれたりします。
幼稚園では、このように、時間をかけて“自然”と“仲間”と“寄り添ってくれる先生”と関わりながら、心と身体を使って自発的に遊ぶ事でたくさんの学びを得て行きます。あそびには、学べるチャンスがたくさんあります。集中力・想像力・社会性・判断力・チャレンジ精神等、教科書には書かれていない生きる上で必要な、そして大切な事が育ちます。ここは、夢中になって遊び、「生きる力」を学ぶ場所なのです。だからこそ楽しいのです。
ようこそ幼稚園へ!
今日も、子供達が、元気に登園して来ます。中には、新しい環境にまだちょっぴり緊張して幼稚園にやって来る子、「ママがいい!」「パパ~!」と泣きながら先生の腕に抱かれて中に入って行く子、その姿を心配そうに見送られるご家族の方──毎年の光景が見られます。それでも、幼稚園で過ごしているうちに、笑顔で楽しめ「幼稚園って楽しい!」と思ってくれている表情に少しずつ変わってきました。
最近は、年長組の子供達が、不安気にやって来る新入園児達を中門で待ち受けて、手をつないでお部屋まで連れて行ってくれるようになりました。「荷物を持ってあげようか?」「おいで」と手を引かれて自分の歩幅に合わせてもらってゆっくりと歩いて行くその子にとっては、自分を守ってくれる人が幼稚園にもたくさんいる事を知り、安心感につながっているはずです。年長組の子供達にとっては、小さい子のために何かができている事を実感し、労わりの気持ちや自尊心が芽生えます。異年齢との関わりもまた子供達を育ててくれます。様々な経験の一つひとつが、子供達を成長させてくれるはずです。
真っ白だった体操服が泥んこになっていたり、靴を濡らして帰って来たり、膝小僧に絆創膏を貼ってもらっていたり、あるいは、友達と遊んだ事やケンカをした事を話したりするでしょう。それは、夢中になって学んでいる証だと思ってあげてください。幼稚園舎の屋上から、こいのぼりが元気に泳ぎながら、そんな子供達を見守ってくれています。
これからが楽しみな三次中央幼稚園の大切な子供達!ようこそ幼稚園へ!
今年度も『葉子えんちょうせんせいの部屋』で毎月お付き合いいただき、保護者の皆様と共に「育てる」「育む」とは何か?を考え合うきっかけとなればと思いながら書かせていただきます。読んでいただく事で更にお子さんの事を愛おしく感じてもらえたら嬉しいです。どうぞよろしくお願い致します。
2025年4月30日 5:27 PM | カテゴリー:葉子えんちょうせんせいの部屋 | 投稿者名:えんちょう先生